
でろ様
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スター
グレード
称号
特定店舗集中型
総合満足度
5.0
風の匂いが変わった、と先に気づいたのは彼女のほうだった。 街路樹の若い葉が、まだ頼りない光り方で揺れている。桜はもうすっかり消えていて、少し前までそこに別の季節があった。 夕方の明るさはもう春のものではなくて、どこか初夏のほうを向いている。けれど日陰に入ると、まだ少しだけ季節の名残がある。そういう中途半端さが、今日は妙によかった。 何か話していたはずなのに、その中身は思い出せない。 ただ、彼女がふと笑ったとき、横顔の輪郭が前より少しだけくっきり見えた気がした。知っているはずの顔なのに、まだ見慣れていない部分が残っている。季節が変わるたびに街の見え方が少しずつずれるみたいに、人の印象もまた、近づくほど定まらなくなる。 公園では若い女たちが遊具の上に登って遊んでいた。 その声が、湿り気をなくした夕方の空気の中を、乾いた紙みたいにまっすぐ飛んでいく。 彼女は「これからはもうずっと半袖かな」とだけ言った。 僕はうなずいた。 僕らにはそれぞれ引き取るべき夜が待っている。 空の青みがゆっくりと深くなっていった。
利用日: 2026年4月18日